スマートフォンサム
これはスマホの新商品の名前ではありません。新しい病気の名前です。
先日、NHKの健康番組、「ためしてガッテン」でこの新しい病気が取り上げられていました。
スマートフォンはもちろんスマホのことです。サム(thumb)は英語で親指を意味する言葉です。スマホの操作で、親指を使い過ぎたために手首が痛くなる症状のことを言います。その本態は親指の腱鞘炎です。
スマホで文字入力をする時、スピードを速めるためにフリック入力をしますが、これがこの病気の原因となっています。
私が一番驚いたことは、番組の回答者が親指の使い過ぎなのに何故手首が痛くなるのかと、最初のうちは不思議がっていたことです。親指の使い過ぎならば、親指が痛くなるのが当たり前だろうという発想です。整形外科専門医からすると、親指を使い過ぎれば手首が痛くなるのは当然だろうという感覚です。
実は親指を伸ばす腱は手首を通っていて、それを動かす筋肉は前腕に着いています。親指を曲げたり伸ばしたりを繰り返すと、手首の部分で腱が擦れて、腱鞘炎を起こすというわけです。
スマートフォンサムは何も新しい病気ではありません。整形外科では人の名前が付けられているぐらいの有名な病気で、ドゥケルバン病と呼んでいます。スイスの外科医であったドゥケルバンが初めて詳しく報告したので、そう呼ばれるようになりました。
この病気は、出産後1年以内の女性の方がかかりやすく、よく外来を受診されます。この時期は赤ちゃんの首がまだすわらないので、赤ちゃんの頭を手で支えるわけですが、この時に親指を大きく広げた格好を取ります。この親指の動作が腱鞘炎の原因となっています。
一度発症すると治るのに時間がかかります。スマホでの親指の使い過ぎには十分に注意した方が良いと思います。
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